グラジエント分離の検討過程で試料を注入していないブランクランで図の(A)のように無数のピークが認められる現象がありました。カラムを取り外して同様の操作を行うと(B)のようにゴーストピークは認められません。したがって、カラムに原因があると考えられます。
しかし、カラムを洗浄しても、交換しても改善されません。そこで、カラム以外の要因を検討したところ溶離液の調製に使用している水が原因であることが判りました。間違って通常の蒸留水(HPLC用でないもの)を使用していたため、HPLC用の蒸留水に変更するとカラムの有無に関わらず(B)のようなベースラインが得られました。
このように、グラジエント溶出では水の純度がベースラインに影響します。また、HPLC用の蒸留水であっても開封 (購入) 後、日数が経過すると汚染され、やはりゴーストピークの原因となります。アイソクラティックでは問題にならない場合でも、グラジエントではトラブルが起こる可能性があります。グラジエント溶出では有機溶媒の組成比が低い条件でカラムを初期化するので、この時、溶離液中の不純物がカラムに吸着して濃縮されます。分析を開始して、有機溶媒の組成を上げていくと吸着されていたものが溶出してゴーストピークとなります。ゴーストピークの大きさは初期化の時間が長いほど大きくなります。カラムを装着しない場合に、ゴーストピークが認められなかったのは初期化時に吸着、濃縮が起こらないためです。
グラジエント分析では溶媒のグレードや管理に特に注意してください。