テクニカルインフォメーション

陽イオン交換カラムを用いたモノクローナル抗体の高分離分析

ジュネーブ大学、ローザンヌ大学のS. Feketeらは、4種のノンポーラスタイプの陽イオン交換カラムを用いてpHグラジエントモードおよび塩グラジエントモードで各種モノクローナル抗体の分析を行い、選択性や分離の比較を行いました。検討の結果、多くのケースにおいて、BioPro IEXカラムで高分離が得られる結果となりました。
また、アイソフォームやチャージバリアントなどの分離に、カラムを連結し、長時間かけた緩いグラジエント勾配で分析を行うことで、高分離が得られています。

分析サンプル

分析検討には、キメラ抗体やヒト化抗体、完全ヒト抗体の種類、pI値、IgGのサブクラスが様々なものを検討しました。

  サンプル 種類 クラス/サブクラス pI
1 Natalizumab ヒト化 IgG4 7.3
2 Cetuximab キメラ IgG1 7.9
3 Adalimumab 完全ヒト IgG1 8.4
4 Denosumab 完全ヒト IgG2 8.8

モノクローナル抗体の分離比較

4種のモノクローナル抗体について、pHグラジエントモード、塩グラジエントモードにおいて、BioPro IEX SFを含む強カチオン交換カラム3種、弱カチオン交換カラム1種の4製品で分離比較を行いました。
ナタリズマブ(ピーク1)では、そのアイソフォームが吸着し、ピークがブロードになりがちですが、BioPro IEXカラムでは非常にシャープなピークが得られています。また、BioPro IEXカラムでは、セツキシマブ(ピーク2)のチャージバリアントのピークが多数確認でき、アダリムマブ(ピーク3)とそのアイソフォームとの分離においても塩グラジエントモードで最も良好な結果が得られています。
どちらのモードにおいても、非特異的吸着が極めて小さいBioPro IEX SFでは、シャープなピークが得られ、チャージバリアントやアイソフォームなどの分離に有効なことがわかります。

1. natalizumab
2. cetuximab
3. adalimumab
4. denosumab
pHグラジエントモード
Eluent A) CX-1 pH Gradient Buffer A* (pH 5.6)
B) CX-1 pH Gradient Buffer B* (pH 10.2)
0-100%B (0-20 min) for 100 X 4.6 mmI.D.
0-100%B (0-30 min) for 150 X 4.6 mmI.D.
Flow rate 0.6 mL/min

*Purchased Thermo Fisher Scientific Inc.

塩グラジエントモード
Eluent A) 10 mM MES-NaOH (pH 5.7)
B) 10 mM MES-NaOH (pH 5.7)
     containing 1 M NaCl
0-20%B (0-20 min) for 100 X 4.6 mmI.D.
0-20%B (0-30 min) for 150 X 4.6 mmI.D.
Flow rate 0.6 mL/min

カラム連結による高分離分析

分離が難しいバリアントやアイソフォームなども、BioPro IEX SF 5 µm, 100 X 4.6 mmI.D.のカラムを2本連結し、長時間の緩いグラジエント勾配にすることで高分離が得られています。

塩グラジエントモード
Column BioPro IEX SF 5 µm,
100 X 4.6 mmI.D. (L=10 cm)
100 X 4.6 mmI.D. X 2 (L=20 cm)
Eluent A) 10 mM MES-NaOH (pH 5.7)
B) 10 mM MES-NaOH (pH 5.7)
     containing 1 M NaCl
Flow rate 0.6 mL/min

抗体などのバイオ医薬品分析に最適なBioPro IEXカラム

BioPro IEX カラムは非特異的吸着が極めて小さい親水性ポリマーを基材としたイオン交換カラムです。リガンド導入量などの担体表面構造やカラムへの充填密度の最適化などにより、優れたピーク対称性と高分離能を実現しています。
特にノンポーラスタイプは極めて高い分離能を有し、超高速分析が可能です。また、高分離能が要求されるバイオ医薬品の特性解析や品質管理などにも有効です。
粒子径3 µmのカラムを追加し、さらなる高分離が期待できるラインナップとなっています。

Reference

S. Fekete, A. Beck, D. Guillarme, Characterisation of cation exchanger stationary phases applied for the separations of therapeutic monoclonal antibodies, J. Pharm. Biomed. Anal., 2015, 111, 169–176.