テクニカルインフォメーション

逆相カラムにおけるペプチド・タンパク質の分離のポイント

逆相カラムでペプチド・タンパク質の分離をする際は、カラムの選択がポイントとなります。分離対象物質の分子量に合わせて適切なカラムを選択し、グラジエント勾配や移動相溶媒、カラム温度など分離条件の最適化を行います。

ペプチド・タンパク質分離に影響するファクター

カラム

ターゲットのペプチド・タンパク質の分子量や疎水性に合わせてカラムを選択
一般的に分子量が大きいほど、細孔径が大きく疎水性が低いカラムが適する
カラムハードウェアへの吸着を抑制するバイオイナートカラムも選択可能

移動相

0.1% TFA/acetonitrileのグラジエント溶出がファーストチョイス
イオン性に差がある混合物の場合、TFAの濃度や酸の種類、pH値の変更も有効
LC/MSではギ酸を含む移動相を多用
分子量の大きいタンパク質では溶出力の高い2-propanolの添加も効果的

温度

分子量が1万以上のタンパク質において、高温分析が非常に効果的
高温条件を使用することで、抗体など15万程度までのタンパク質の分離が可能
高温条件でも耐久性のあるカラムを選択

ペプチド、タンパク質、抗体の逆相分析

逆相カラムの選定は、下図を参考にして、分離対象物質の分子量や疎水性を目安に行います。その下のグラフでは、分子量1,859から76,000までのペプチド、タンパク質について、細孔径30 nmのTriart Bio C18とTriart Bio C4、細孔径12 nmのTriart C18でピークの半値幅を比較しています。
ペプチドなどの分子量が1万程度までの物質の分離には、細孔径が12 nmのTriart C18やTriart C8が有効です。分子量が1万以上のタンパク質では、分子が十分に拡散できる細孔径30 nmのワイドポアカラムが適しています。Triart Bio C4は細孔径が30 nmで、高温条件との組み合わせで分子量15万程度の抗体の分析にも適用できます。また、分子量のほか、分離対象物の疎水性も考慮してC18、C8、C4などから最適なカラムを選定します。 カラムハードウェアへの吸着が懸念される場合には、バイオイナートカラムAccura Triartが有効です。

分子量を指標としたTriartカラム選択の目安

細孔径による分離への影響

Column 150 X 3.0 mmI.D.
Eluent A) water/TFA (100/0.1)  
B) acetonitrile/TFA (100/0.1)
10-95%B (0-15 min)
Flow rate 0.4 mL/min
Temperature 40°C
Detection UV at 220 nm
Injection 4 µL (0.1-0.5 mg/mL)
Sample γ-Endorphin (MW 1,859), Insulin (MW 5,733),
Lysozyme (MW 14,000), β-Lactoglobulin (MW 18,363),
α-Chymotrypsinogen A (MW 25,656),
BSA (MW 66,000), Conalbumin (MW 76,000)

ペプチド・タンパク質の分離におけるカラム温度の効果

高温条件では、分離選択性の変化やピーク形状の改善により、分離度が向上しています。高温条件でのピーク形状改善の効果は、タンパク質の分子量が大きいほど顕著となります。
Triartは耐久性に優れているため、高温でも安定した分析が可能です。

  1. Oxytocin      (MW 1,007)
  2. Leu-Enkephalin   (MW 556)
  3. β-Endorphin    (MW 3,465)
  4. Insulin        (MW 5,733)
  5. β-Lactoglobulin A (MW 18,400)
Column YMC-Triart C18 (1.9 µm, 12 nm)
50 X 2.0 mmI.D.
Eluent A) water/TFA (100/0.1)  
B) acetonitrile/TFA (100/0.1)
10-80%B (0-5 min)
Flow rate 0.4 mL/min
Detection UV at 220 nm

カラム温度・移動相条件による分離への影響

目的化合物の分子量からカラムを選択し、一般的な条件で検討しても分離がうまくいかない場合には、カラム温度や移動相溶媒の種類などを変更することで分離が改善することがあります。 ここでは抗菌ペプチドの分析条件検討例を示します。

分析対象物(抗菌ペプチド)
HPLC共通条件
Column YMC-Triart C18 (1.9 µm, 12 nm) 
50 X 2.0 mmI.D.  
Flow rate 0.4 mL/min
Detection UV at 220 nm

カラム温度における分離比較

一般的なペプチド分析条件で検討すると分離しませんが、温度を70℃に上げて分析すると1, 3のピークと2のピークが分離しています。

Eluent A) water/TFA (100/0.1)
B) acetonitrile/TFA (100/0.1)
25-45%B (0-5 min)  

酸の濃度・種類およびグラジエントの検討

TFAの濃度や酸の種類をギ酸に変更することで分離選択性が変化し、分離が大きく改善しています。さらにアセトニトリルのグラジエント勾配を緩やかにすることで分離度が向上しています。

Eluent A) 酸含有水溶液
B) 酸含有アセトニトリル溶液
(0.1% HCOOHのB液は0.08%)
Temperature 70℃

移動相組成の検討

有機溶媒の組成をacetonitrileから2-propanol/acetonitrile混液に変更し、グラジエント条件を最適化することで、同等の分析時間で分離度が向上しています。ペプチド・タンパク質の分析では、移動相に溶出力の高い2-propanolを添加することで、選択性が変化し分離が改善することがあります。

Eluent A) 0.1% formic acid in water
B) 0.08% formic acid in organic solvent
Temperature 70℃
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