疎水クロマトグラフィー(HIC)は、抗体などのタンパク質と充填剤(担体)との疎水性相互作用に基づいて分離するモードです。高塩濃度の移動相条件下でタンパク質を担体に吸着させ、塩濃度を下げることで溶出させます。温和な条件で分離するため、タンパク質などを変性させることなく活性を維持したまま分析できます。
ここでは、HIC分離に影響する要因をご紹介します。
HICの移動相には、塩析力が強い(NH4)2SO4を含む緩衝液が一般的によく用いられます。グラジエント開始時の(NH4)2SO4塩の濃度が高いほど、タンパク質の保持が強くなります。タンパク質の疎水性が低く、保持が十分ではない場合は、グラジエント開始塩濃度を上げることが有効です。
その他の塩としてはNaClやCH3COONH4なども使用されます。下図のように、タンパク質の種類によっては塩の違いで分離選択性が大きく変わるため、分離が困難な場合には塩の変更も有効です。ただし、これらの緩衝液で(NH4)2SO4と同程度の保持を得るには高濃度にする必要があるため、塩が析出したりLCシステムに影響を与えたりする可能性があり、注意が必要です。
ワイエムシィの疎水クロマトグラフィー用カラム BioPro HIC BFは、担体の疎水性を高く設計しているため、他の市販カラムでは保持できないような疎水性の低いタンパク質を、低塩濃度あるいは塩析効果の低い塩の条件でも分析することができます。
Column | BioPro HIC BF 4 µm, 100 X 4.6 mmI.D. |
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Eluent | A) 塩を含む 100 mM NaH2PO4-Na2HPO4 (pH 7.0) B) 100 mM NaH2PO4-Na2HPO4 (pH 7.0) 0.2 M/min(塩のグラジエント勾配は同一) |
Flow rate | 1.0 mL/min |
Temperature | 25°C |
Detection | UV at 280 nm |
Injection | 5 µL (0.5 mg/mL) |
Column | BioPro HIC BF 4 µm, 100 X 4.6 mmI.D. |
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Eluent | A) 塩を含む 100 mM NaH2PO4-Na2HPO4 (pH 7.0) B) 100 mM NaH2PO4-Na2HPO4 (pH 7.0) 0-100%B (0-10 min), 100%B (10-15 min) |
Flow rate | 1.0 mL/min |
Temperature | 25°C |
Detection | UV at 280 nm |
Injection | 10 µL (0.25 mg/mL) |
グラジエント勾配を緩やかにすることで分離を向上させることができます。
Column | BioPro HIC BF 4 µm, 100 X 4.6 mmI.D. |
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Eluent | A) 100 mM NaH2PO4-Na2HPO4 containing 2.0 M (NH4)2SO4 (pH 7.0) B) 100 mM NaH2PO4-Na2HPO4 (pH 7.0) |
Flow rate | 1.0 mL/min |
Temperature | 25°C |
Detection | UV at 280 nm |
Injection | 10 µL (0.5 mg/mL) |
安定性の低いタンパク質では、より低い温度での分析が必要な場合があります。BioPro HIC BFでは15°Cにおいても良好な結果が得られます。 また、HICでは、カラム温度が高いほど保持が長くなります。これは、温度が高くなることによりタンパク質の構造が変化し、担体と接触する疎水性面積が変化することにより、疎水性相互作用が大きくなるためと考えられます。
Column | BioPro HIC BF 4 µm, 100 X 4.6 mmI.D. |
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Eluent | A) 100 mM NaH2PO4-Na2HPO4 containing 2.0 M (NH4)2SO4 (pH 7.0) B) 100 mM NaH2PO4-Na2HPO4 (pH 7.0) 0-100%B (0-10 min), 100%B (10-15 min) |
Flow rate | 1.0 mL/min |
Detection | UV at 280 nm |
Injection | 5 µL (0.5 mg/mL) |