Contichromは、2本のカラムを用いる独自の連続精製プロセスにより、高純度かつ高回収率の精製を実現するツインカラム連続クロマトグラフィー精製システムです。その連続精製プロセスの一つであるN-Richでは、試料中に含まれる不純物などのマイナー成分を自動化されたプログラムによって、短期間で必要な量・純度に濃縮・単離することができます。不純物精製の労力と時間を大幅に削減できるため、医薬品の開発や製造において要求される不純物の評価などに有用です。
ここでは、N-Richを用いた精製例を紹介します。
陽イオン交換カラムを用いたpHグラジエント分析において、図1のようにメインピーク(Product)の前後に合計7つのアイソフォーム由来のピークが検出されたバイオ医薬品(バイオシミラー)について、メインピークの前に溶出する酸性アイソフォーム(A1-A5;region 1)と後ろに溶出する塩基性アイソフォーム(K1-K2;region 2)に分けてN-Richを実施し、個々のアイソフォームを濃縮・単離します。
図1. 精製前のバイオ医薬品(バイオシミラー)のイオン交換クロマトグラム
バッチ法によりグラジエント勾配や負荷量を最適化
N-Richによる精製
精製品をHPLC分析し、条件を満たすフラクションをプール
Protein Aカラムによる濃縮
最終精製品
N-Richは専用ソフトウェアのウィザードに従ってバッチ法で得られたクロマトグラムをロードし、簡単な条件の設定のみで実行できます。
以下にregion 1 に含まれる5つのアイソフォームをN-Richで精製した工程を示します。
2本の陽イオン交換カラム(BioPro IEX SmartSep S10 をガラスカラムECOPLUSに充填(内径10 mm, ベッド長200 mm))を用いてpHグラジエントを実施しました。カラム1から溶出したregion 1以外のピーク部分(メインピークおよびregion 2のアイソフォーム)は廃棄して、region 1を追加の抗体サンプル(feed)とともにカラム2に導入するサイクルを繰り返し、region 1を濃縮しました。図2は、2本のカラムで合計12回繰り返した際のクロマトグラムの重ね書きしたものです(カラム1;青、 カラム2;赤)。矢印で示しているように、それぞれのカラムでサイクル毎にregion 1が濃縮されている様子が分かります。
図2. 濃縮・追加工程のクロマトグラム
カラム1から溶出したregion 1以外のピーク部分(メインピークおよびregion 2のアイソフォーム)を廃棄し、抗体サンプルの追加はせずにregion 1のみをカラム2に導入し、region 1の純度を高めました。図3に示すクロマトグラムでは、カラム1に比べカラム2の〇部分(region 1とそれ以外のピークの境界部分)の分離が向上している様子が分かります。
図3. 分離工程のクロマトグラム
濃縮や分離工程よりもグラジエント勾配を緩やかにすることで分離を向上させて、十分に濃縮したregion 1を溶出し、フラクションを細かく回収しました。
図4. 溶出工程のクロマトグラム
region 2 についても同様にN-Richを実施し、表1および図5に示すように、7つすべてのアイソフォームを単離することに成功しました。精製前の抗体サンプル中の含量(表1;Percentage in feed)に相関した量のアイソフォームが単離でき(1.5~8.0 mg)、最大で約70倍に濃縮されました。従来の単カラムでのバッチ精製では、一つのアイソフォームを単離するにも数十日を要しますが、N-Richでは7つすべてのアイソフォームを数日で単離でき、精製時間を約1/10と大幅に短縮することができました。
ここで単離したアイソフォームサンプルは、構造解析や活性評価などに使用可能です。
Isoform |
Percentage in feed |
Purity N-Rich fraction |
Amount N-Rich fraction |
Enrichment |
---|---|---|---|---|
A1 | 1.5% | 80% | >1.5 mg | 53x |
A2 | 2.5% | 85% | >4.0 mg | 32x |
A3 | 1.5% | 90% | >1.5 mg | 69x |
A4 | 5.0% | >90% | >7.0 mg | 18x |
A5 | 8.5% | >90% | >3.0 mg | 10x |
K1 | 14.5% | 90% | >8.0 mg | 6x |
K2 | 3.5% | 75% | >8.0 mg | 21x |
表1. N-Richプロセスの結果
図5. 精製前のサンプルとN-Rich精製後のフラクションの比較